【言語聴覚士が解説】認知症の種類と特徴|アルツハイマー・脳血管性・レビー小体の違いをわかりやすく説明
「認知症」という言葉はよく耳にするけれど、種類があることはあまり知られていません。
「アルツハイマー型認知症」と「認知症」を同じものだと思っている方も多く、実際にはいくつかの種類があり、それぞれ症状や進み方が大きく異なります。
種類によって、得意なこと・苦手なこと・どんな支援が効果的かも変わってきます。
この記事では、現役の言語聴覚士として10年以上、さまざまな種類の認知症の方のリハビリに携わってきた私が、認知症の主な4つの種類と特徴をわかりやすく解説します。ご家族の様子が気になっている方や、認知症予防に関心がある方にぜひ読んでいただきたい内容です。
認知症とは何か【基本から確認】
認知症の定義
認知症とは、脳の神経細胞が何らかの原因でダメージを受け、記憶・思考・判断などの認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態のことを指します。
大切なのは、「加齢による物忘れ」とは異なるという点です。
加齢による物忘れは、たとえば「朝ごはんのメニューが思い出せない」という部分的な忘れですが、認知症の場合は「朝ごはんを食べたこと自体を忘れる」という体験全体の記憶が失われます。
認知症は「病名」ではなく「状態」を指す言葉
認知症は一つの病気の名前ではなく、さまざまな脳の疾患によって引き起こされる状態の総称です。原因となる疾患によって、症状・進行スピード・対応方法が大きく異なります。
主な原因疾患は次の4つです。
- アルツハイマー型認知症
- 脳血管性認知症
- レビー小体型認知症
- 前頭側頭型認知症
① アルツハイマー型認知症
最も多い認知症の種類
アルツハイマー型認知症は、認知症全体の約50〜70%を占める最も多い種類です。脳にアミロイドβというタンパク質が蓄積し、神経細胞が徐々に死滅することで発症します。
主な症状と特徴
最初に現れる症状として最も多いのが**「新しいことが覚えられない(近時記憶の障害)」**です。昨日の出来事、さきほどの会話、食事をしたかどうか——こうした直近の記憶から失われていきます。
一方で、昔の記憶(幼少期・若い頃の記憶)は比較的長く保たれます。「最近のことは忘れるけど、昔のことはよく覚えている」という状態がしばらく続くのがアルツハイマー型の特徴のひとつです。
その他の症状として、場所・時間・人物の見当識障害(今がいつ・どこにいるかわからなくなる)、言葉が出にくくなる失語傾向、計画を立てて実行する力(遂行機能)の低下なども見られます。
リハビリ現場での関わり
言語聴覚士として多くのアルツハイマー型認知症の方と関わってきた経験から感じるのは、コミュニケーションの工夫が非常に重要だということです。
新しい情報を覚えることが難しくなるため、「さっき話しましたよね」という対応は混乱を招きます。何度同じことを聞かれても、毎回初めて答えるような穏やかな対応が、本人の安心感につながります。
また、言葉が出にくくなる段階でも、音楽・写真・昔の思い出話など、長期記憶に訴えるアプローチは有効なことが多く、脳トレでも回想法的な要素が効果的です。
② 脳血管性認知症
脳卒中が原因となる認知症
脳血管性認知症は、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血などの脳卒中によって脳の一部が損傷し、認知機能が低下する認知症です。認知症全体の約20%を占め、アルツハイマー型に次いで多い種類です。
主な症状と特徴
脳血管性認知症の最大の特徴は、**「まだら認知症」**と呼ばれる状態です。脳のどの部分が損傷したかによって、できること・できないことにはっきりとした差が生まれます。
たとえば、記憶力はある程度保たれているのに歩行が難しい、言葉の理解はできるのに話す言葉が出にくいなど、症状が均一に現れないのが特徴です。
また、脳卒中が起きるたびに症状が段階的に悪化する「階段状の進行」も、アルツハイマー型との大きな違いです。アルツハイマー型が緩やかに進行するのに対し、脳血管性は安定期と悪化期を繰り返しながら進んでいきます。
感情のコントロールが難しくなる「感情失禁」(些細なことで急に泣いたり笑ったりする)も見られることがあります。
リハビリ現場での関わり
言語聴覚士は、脳卒中後の患者さんに深く関わる職種です。脳血管性認知症の方のリハビリでは、残っている機能を最大限に活かすアプローチが重要です。
記憶力がある程度保たれているケースでは、メモや手帳などの補助ツールを活用して日常生活を維持する工夫が有効です。また、再発予防のために血圧管理・生活習慣の改善が非常に重要で、ご家族への指導も私たちの大切な仕事のひとつです。
③ レビー小体型認知症
幻視と身体症状が特徴的な認知症
レビー小体型認知症は、脳にレビー小体というタンパク質が蓄積することで発症します。認知症全体の約15〜20%を占めると言われています。
アルツハイマー型と比べると知名度が低いですが、正確な理解が支援の質に大きく影響する、非常に重要な種類の認知症です。
主な症状と特徴
レビー小体型認知症には、他の認知症にはない特徴的な症状があります。
① 幻視(リアルな幻覚)
「部屋に知らない人がいる」「小さな虫がたくさん見える」など、実際にはいないものが見える幻視が早期から現れます。本人には非常にリアルに見えているため、「そんなものはいない」と否定することは混乱を招き逆効果です。
② 認知機能の変動
1日の中でも、「さっきまではっきりしていたのに急にぼんやりしてきた」というように、認知機能が大きく波打ちます。この変動は介護する家族を戸惑わせることが多いですが、これもレビー小体型の特徴です。
③ パーキンソン症状
手足の震え・動作の緩慢・筋肉のこわばりなど、パーキンソン病に似た身体症状が現れます。転倒リスクが高まるため、環境整備が重要です。
④ 睡眠時の異常行動(レム睡眠行動障害)
夢を見ながら大声を出したり、手足を激しく動かしたりすることがあります。これがレビー小体型認知症の前兆として現れることもあります。
リハビリ現場での関わり
レビー小体型の方への対応で特に重要なのは、幻視を否定しないことです。「見えているものは本物ではない」と伝えても混乱するだけです。「それは怖いですね」と感情に寄り添いながら、安心できる環境を作ることが大切です。
また、認知機能の変動があるため、「今日は調子が良い・悪い」と一喜一憂せず、波があることを前提に関わることが支援の基本です。
④ 前頭側頭型認知症
若い世代にも発症する認知症
前頭側頭型認知症は、脳の前頭葉と側頭葉が萎縮することで発症します。認知症全体の中では比較的まれですが、65歳以下の若年性認知症の中では比較的多い種類です。
主な症状と特徴
前頭側頭型認知症の最大の特徴は、記憶力よりも「人格・行動・言語」への影響が先に現れる点です。
「急に礼儀や社会的なルールを守れなくなった」「同じ行動を何度も繰り返す(常同行動)」「甘いものへの強い欲求が現れた」「言葉が出にくくなった(または理解が難しくなった)」といった変化が初期症状として現れることがあります。
記憶力は比較的保たれることが多いため、「認知症には見えない」と周囲に理解されにくく、本人・家族ともに大変な思いをするケースが多いです。
4つの認知症を比較する【まとめ表】
| 種類 | 割合 | 主な初期症状 | 進行の仕方 |
|---|---|---|---|
| アルツハイマー型 | 約50〜70% | 近時記憶の低下 | 緩やかに進行 |
| 脳血管性 | 約20% | まだら症状・感情失禁 | 階段状に進行 |
| レビー小体型 | 約15〜20% | 幻視・認知機能の変動 | 変動しながら進行 |
| 前頭側頭型 | 比較的まれ | 人格変化・言語障害 | 種類により異なる |
認知症の種類に関わらず共通して大切なこと
種類によって症状や対応方法は異なりますが、どの種類の認知症にも共通して重要なことが2つあります。
① 早期発見・早期対応
認知症はどの種類も、早期に発見して適切な対応を始めることが、症状の進行を緩やかにする上で非常に重要です。「もしかして?」と感じたら、早めにかかりつけ医や専門医(神経内科・精神科・もの忘れ外来)に相談することをおすすめします。
② 残っている力を活かすこと
認知症と診断されても、すべての機能が失われるわけではありません。どの段階でも「できること」は必ずあります。残っている力を最大限に活かしながら、その人らしい生活を続けることが、リハビリと介護の基本です。
脳トレで認知症予防に取り組もう
認知症の種類や特徴を知ることは、予防への第一歩です。どの種類の認知症でも、脳を継続的に使い続けることが予防・進行抑制に有効とされています。
当サイトでは、言語聴覚士の視点から認知症予防に効果的な脳トレ問題を多数紹介しています。毎日5分から取り組める問題が揃っていますので、ぜひご活用ください。
まとめ
認知症には主に4つの種類があり、それぞれ症状・進行・対応方法が大きく異なります。
- アルツハイマー型:最多。近時記憶の低下から始まる
- 脳血管性:脳卒中が原因。まだら症状と階段状の進行が特徴
- レビー小体型:幻視・認知機能の変動・パーキンソン症状が特徴
- 前頭側頭型:人格変化・言語障害が先に現れることが多い
種類を正しく理解することで、より適切なサポートが可能になります。「最近、様子がおかしい」と感じたら、早めに専門医に相談することをおすすめします。
※本記事は情報提供を目的としており、診断・治療の代替となるものではありません。
